COUSP 2025参加記

このたびブラジル・サンパウロで開催された眼科学会 COUSP 2025に参加してきましたので、本誌上をお借りしてご報告します。現地参加者は約3,000人。サンパウロ大学が主催し、南米でも格式ある学会の一つと聞いていたとおり、朝から晩まで人の流れが途切れず、「学会とは本来こういう熱気があったのかもしれない」と久しぶりに実感する数日間でした。

参加の経緯は、以前 JRVS times に投稿した、シリコーンオイル関連の視力障害と、その原因候補病態であるフェロトーシス(鉄に関連した細胞死)に関する国際共同研究の話から始まります。現地側とのやり取りの中で「一度こちらに来て研究の打ち合わせをしよう」という流れになり、研究計画を詰めていくうちに、「サンパウロ大学主催の学会会期に合わせて訪問し、招待演者としても参加してほしい」との依頼を受け、今回の参加が実現しました。

学会では、フェロトーシス関連および眼科手術用アジュバントに関して2つの講演を行い、さらに1つのパネルディスカッションを担当しました。印象的だったのは、とにかく質問が多いことです。しかも遠慮のない、良い意味での“前のめり”な質問が多く、発表がその場で次の議論に直結する感覚がありました。

さらに驚いたのが、「ライブ手術もお願いできないか」という積極的なオファーです。最終的に、眼トキソプラズマ症既往のある20歳症例で、**macular pucker(というよりPVRに近い状態)**の手術をライブで行いました。現地では私が “International guest” として初めてライブ手術を担当したらしく(ここで言う “international” は、どうも「アメリカ大陸以外」という意味合いのようです)、器具の選択や操作の意図など、かなり踏み込んだ質問を多数受けました。

もっとも、国際留学生を助手につけて手術しながら解説する経験はこれまでにも多く、極度の緊張状態というよりは、むしろ「南米の眼科医に日本式の手技をすべて見せたら、どのように受け止めてもらえるだろうか」と期待しつつ集中して臨めました。尊敬する故・安藤文隆先生の安藤式インデンターの利点をしっかり紹介できたことに加え、日本の某レンズ企業の製品の良さ(光学的な精密さ)もアピールできました。

繰り返しになりますが、学会全体の雰囲気として参加者がとにかく積極的でした。学会の数が限られていることも背景にあるのかもしれませんが、聴衆が“聞くだけ”で終わらず、発表者と議論し、持ち帰って自分たちの現場に落とし込もうとする姿勢が強く印象に残りました。

もう一つ印象深かったのは、サンパウロ市と日本人(特に留学生を含むコミュニティ)との交流の歴史が非常に長いことです。私より年上の世代の日系人医師の中には、日本語を片言ながら話せる方も少なくありません。実際、現地でのちょっとした場面でも「日本」への親しみや信頼が会話の入口となり、話が進む――そんな“見えない後押し”を何度も感じました。海外にいながら、日本人であることがプラスに働く場面が多かったのは、ありがたい経験でした。

今回のCOUSP参加は、フェロトーシス研究の発信にとどまらず、「現地で何が求められているか」を肌感覚で把握できたこと、そして何より、研究を“研究で終わらせずに昇華する”ために何が必要かを改めて考え直せたことが大きな収穫でした。今回は網膜硝子体学会総会とスケジュールが完全に重なり、同総会に参加できなかったことは大きな心残りですが、ぜひまたサンパウロを訪問する機会を得たいと思います。そしてCOUSPに再度呼ばれるよう、引き続き積極的に活動していきます。

1枚目

ライブ手術の風景:写真の見栄えは良いですが、器具など細かい準備が不安定だったのは、各国の文化の違い(?)かもしれません。

2枚目

パネルディスカッション:聴く側として、日本語-英語の同時翻訳も難しいですがポルトガル語-英語の同時通訳に対応するためのヘッドフォン付け外しは至難の業でした。

文:教授 兼子 裕規