浜松医科大学眼科学教室は、昭和51年、初代の渡邉郁緒教授によって開講されました。網膜ジストロフィや視覚電気生理学の研究を中心に、網膜光障害、眼内レンズ挿入眼の光学的特性に関する研究などの基礎研究が積極的に行われ、発展を遂げて参りました。平成12年5月に堀田喜裕教授が着任され、遺伝性眼疾患に対する原因の究明、治療法の確立など一貫した眼科分子生物学的研究を進めることで多くの診断や治療に貢献して参りました。そして令和6年7月より私(兼子裕規)が第3代教授として着任しました。私はこれまで難治性網膜硝子体疾患に対する手術治療や病態解明などを主な研究テーマとして進めて参りましたが、浜松医科大学においても、これまで私が実践してきた高度な眼科手術の提供や若手医師に対する手術教育、さらには新たな治療法や治療薬の開発を目指し医局スタッフとともに地域に貢献いたします。
当教室では、網膜硝子体疾患の手術成績などの分析、網膜変性疾患の分子遺伝学的研究、斜視の画像診断や治療に関する臨床研究、小児眼科疾患の臨床研究、オキュラーサーフェス疾患の診断や治療に関する臨床研究が行われています。一方で地域医療における大学病院の役割は日々重くなってきております。医師の働き方改革など様々な因子で大学病院での全方向的で高度な医療提供の維持が難しくなる中、一部の大学病院では特定の分野のみに診療内容を絞っているところも見られます。しかし当教室では、角膜移植、白内障手術、緑内障手術、網膜硝子体手術、斜視手術や神経眼科、ぶどう膜炎など地域のニーズに対応できるような体制の継続に努めます。このような背景の中で、医局スタッフの積極的な国際・国内交流を推奨し、国際的な基準や診療方針に基づいた全分野的な眼科標準治療の提供と、網膜硝子体分野と斜視弱視分野など特定分野における先進的な研究の両立を目指します。